健全な懐疑心と不健全な猜疑心
TechCrunch|用心のコスト:
官僚主義がイノベーションを妨げる。みんな知っていることだ。しかし、それはなぜだろうか。理由のひとつは、官僚主義が、用心深さから、即ち過去の失敗を繰り返してはならないという強い意志から生まれたたものだからだ。
「健全な懐疑心と不健全な猜疑心」ということばを思い出した。
記憶が曖昧だけれど,おそらく,監査論の講義で聴いたような。
「どうしてそうなんだろう」という疑問を呈することは,失敗を未然に防ぎ,そのことによって損害を最小限にとどめることができる限りにおいて健全な懐疑心といえる。良い芽までも摘みとってしまうときに,それは不健全な猜疑心になる,という意味で使われていたと思う。
ともあれ,
上のエントリーで紹介されているポール・グレアムの評論はこちらで原文が読める。
ポール・グレアムというひとについては,Wikipediaが詳しい。
その評論の中にSOX法について書いた部分がある。
The Other Half of “Artists Ship” by Paul Braham
In more recent times, Sarbanes-Oxley has practically destroyed the US IPO market. That wasn’t the intention of the legislators who wrote it. They just wanted to add a few more checks on public companies. But they forgot to consider the cost. They forgot that companies about to go public are usually rather stretched, and that the weight of a few extra checks that might be easy for General Electric to bear are enough to prevent younger companies from being public at all.
(拙訳)
もっと最近の例でいうと,サーベンス・オクスリー法はUSの新規公開市場を事実上破壊したことが挙げられる。
それはこの法律の立案者たちの意図したことではなく,ただ,公開企業にもう2,3のチェックを課したかっただけだったはずだ。しかし彼らはそれにかかるコストについて考慮することを忘れていた。公開間近の企業はたいがい,すでに業務的に目一杯の状況にあること,そしてGEのような企業であればどうということのない追加のチェック業務でも,若い小さな企業にとっては公開を阻害されることになるほど厄介なものであるということを忘れていた。
日本でもJ-SOX法が新規公開の障害になると言われている(いた)けれども,その適用初年度に金融危機,世界同時不況がぶつかって,それどころではない状況というのが実際のところかもしれない。
とはいえ,じきに今回の金融不安への反省と再発防止という名目で,新しい規制や規則が作られることになるだろうと思う。
そのときにはその規制や規則が,どういうコストを負わせることになるかを考えないといけない。
The problem is, people who propose new checks almost never consider that the check itself has a cost.
問題は,新しい規制を標榜するひとたちが,その規制自体がもたらすコストについて,ほとんど決して顧みることがないということだ。