
In Accounting on 2009-07-03 by kensco Tagged: J-SOX, SOX, 内部統制
今日のウインブルドンテニス(セレナ・ウィリアムズ vs. エレナ・デメンティエワ)は,はんぱなくしびれた試合でした。
両者とも素晴らしかった。
という訳でこんな時間。
本論とは違うんですが,気になったので。
会計監査において「通常実施すべき監査手続き」を裁判上特定するための「固有リスク」や「統制リスク」を裁判官に説明するにあたり、文書提出の申立てによってかなり「おいしい」文書が出てくるはずであります。(実施基準によって保存期間は5年と定められておりますので、「紛失した」「廃棄した」とは言えないはずであります)
[Via ビジネス法務の部屋: 内部統制 総括するには早すぎる・・・(ような気がします)]
「通常実施すべき監査手続」という概念は平成14年改訂において監査基準では使用しないこととされているので,監査実務上も使わなくなってすでに久しい言葉です。
同様に,平成17年の監査基準改訂で,「固有リスク」「統制リスク」というのは「重要な虚偽表示リスク」として統合されました。まあ,こちらは監査実務上,概念的には残っているものの,監査基準からは消えた言葉。
実施基準には監査調書の保存期間は定められていなくて,監査調書の保存期間について記載があるのは,品質管理基準委員会報告 第1号「監査事務所における品質管理」 第86項,第87項あたり。ただし,そこにも「5年」という記載はなくて,
87. 監査事務所は、法的又は実務的配慮に基づき監査調書の保存期間を設定する。
なお、監査調書の保存期間としては商業帳簿に関する会社法上の要保存期間(10年)が参考となるが、監査調書によっては、当該要保存期間よりも短い保存期間 又は長い保存期間が適当であると判断するものがある。
とあるだけです,Toshi先生。
「内部統制報告制度リスク」(内部統制報告書で有効と判断されていて,内部統制報告書監査でも適正とされていたのに,財務報告に重要な影響を与える不正が発生・発覚するリスク)については,そういう事件が起きないはずは当然ないだろうと思います。
ただ,そういう場合に,「ああ,やっぱり。J-SOXとか言ってたいそうなことをしていたのに,このていたらくか。所詮,内部統制なんてムダムダ。」ということにならないように,制度とは別のところで,内部統制の重要性を表明し続けることが必要でしょうね。関係者は。
次の試合が始まった。ヴィーナス・ウィリアムズはもう勝ちそうなので,寝ることしよー。

In Accounting on 2009-03-11 by kensco Tagged: J-SOX, SOX, 内部統制
内部統制報告制度(J-SOX)が一時の勢いをなくしたので,会計業界はIFRS需要を狙っています。
まあ,ぼくも同業ですから,少なからず同じことを考えていないこともないんですが。
アビーム、企業の国際財務報告基準(IFRS)対応を支援する組織を新設 | 経営 | マイコミジャーナル:
同社は、企業がIFRSに対応していくにあたり、会計関連(処理・開示など)業務に加え、先行導入した欧州でコストと時間を要した業務プロセスとシステムにおける対応に重点を置きつつ、経営管理基盤や内部統制の構築、見直しなど関連するあらゆる領域に対してサービスを提供していく。
そこにコンサル会社やらシステム会社やらが絡んでくると,J-SOXのときのような状況になってしまいそうで,どうだかなあと思います。
J-SOXのときは,「米国SOX法での導入実績」で営業を展開したコンサル会社はこんどは,上の記事にあるように「欧州での実績」で攻めてくるんでしょうね。
システム会社はとりあえず「新しい制度には新しいシステム」という攻め方ですかね。
こんな具合に
またぞろシステムを買えと仰る | ノオト

In Accounting on 2008-12-06 by kensco Tagged: J-SOX, SOX, 内部統制
こういうのを読むと,「J-SOX対応には電子メールの全件保管が必要です」に通底する意図が見える。
来たる「国際会計基準(IFRS)」“全面適用”への対応 第2回 : 富士通総研:
本シリーズでは、お客様企業(上場企業)の経理部門やIT部門にとって重大かつ喫緊の関心事項であり、また、ITベンダーにとっても会計等のシステム刷新のビジネスチャンスとして注目されている「国際会計基準(IFRS)」について、その動向や内容・対応ポイントなどを紹介しています。
いちいち揚げ足とりのようだけれど,こういう細かい事実の掴み損ねが,全体の信頼性を落とすと思う。
わざわざ括弧書きでIFRSとするのなら,国際会計基準でなくて「国際財務報告基準」(International Financial Reporting Standards)とすべき。
つぎ。
これまで独自の会計基準を使っていた日本や米国が国際会計基準を受容(アダプション)する方針を表明しています。
日本については国際会計基準を受容(アダプション)する方針を表明してはいない。
米国(SEC)はマイルストーンを設けて,IFRSの適用するかどうかを2011年に判断するとしたロードマップを公表した段階。
(参考)IFRS導入の世界での潮流と日本の対応―なぜIFRSが選ばれるのか―
つぎ。
これまでの棚卸資産の決算時の価格を決める2つの方法=原価法(取得価格)と低価法(取得価格と時価のうち低い価格)のうち、原価法が認められなくなりました。
こちらを参考。
棚卸資産の簿価切下げへの実務対応|太田達也
棚卸資産会計基準は、原価法の枠組みの中で収益性の低下したものについて簿価切下げを行うという整理をしており、決して低価法という考え方を採用したわけではありません。
明日から試せる「質問のコツ」:「ドリルじゃなくても穴は開く」を気付かせる質問とは? (1/2) – ITmedia Biz.ID:
ドリルを買おうとしている客は、ドリルが欲しいのではなく穴を開けたがっているのだ
いくらドリルを揃えたって,扱えなければ,求める穴は開けられない。
いくらシステムを揃えたって (ry
だから,お客さんが欲しているのは,システムじゃなくて,穴なんだって。

In Accounting on 2008-12-05 by kensco Tagged: J-SOX, SOX, 内部統制
いわゆる「自己監査」というやつで,あきらかに監査証明の有効性に疑義がつく。
内部統制≫ITコンプライアンス-SOX法に漂う日本企業への警鐘:監査法人は本当に独立的な「最後の砦」か?:ソフトバンク ビジネス+IT:
常々著者は疑問に思っているのだが、内部統制のアドバイザリーにあたる人間と内部統制の監査にあたる人間が別だとはいえ、同じ監査法人が内部統制の構築を行い、それを監査するというのは、監査法人としての独立性を損なうものではないだろうか。
公認会計士法では「被監査法人に対する非監査証明業務の同時提供」は次のような規定がある。
(大会社等に係る業務の制限の特例)
第24条の2
公認会計士は、当該公認会計士、その配偶者又は当該公認会計士若しくはその配偶者が実質的に支配していると認められるものとして内閣府令で定める関係を有する法人その他の団体が、次の各号のいずれかに該当する者(以下「大会社等」という。)から第2条第2項の業務(内閣府令で定めるものに限る。)により継続的な報酬を受けている場合には、当該大会社等の財務書類について、同条第1項の業務を行つてはならない。
1.会計監査人設置会社(資本金の額、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額その他の事項を勘案して政令で定める者を除く。)
2.金融商品取引法第193条の2第1項又は第2項の規定により監査証明を受けなければならない者(政令で定める者を除く。)
3.銀行法(昭和56年法律第59号)第2条第1項に規定する銀行
4.長期信用銀行法(昭和27年法律第187号)第2条に規定する長期信用銀行
5.保険業法第2条第2項に規定する保険会社
6.前各号に掲げる者に準ずる者として政令で定める者
第2号で言っている金融商品取引法の193条の2第1項は,金融商品取引所に上場されている有価証券の発行会社(いわゆる上場会社)は財務諸表に監査証明を受けなければいけないという規定で,193条の2第2項は内部統制報告書に監査証明を受けなければいけないという規定。
これらの規定からも分かるように「被監査法人に対する非監査証明業務の同時提供」は禁止されているし,いまどきの監査法人は,かなり気を遣って「被監査法人に対する非監査証明業務の同時提供」を行わないようにしているはず。
実際に金融庁から行政処分を受けることがある。
だから,筆者が書いているような事例がいまだにあるとすれば,問題。
ぼくの感想は「そんなことないでしょ」。
このコラム自体,議論の内容にいかにも今さら感があるので全部を読む気になれない(し,後半は会員限定でそのまま読めない)のだけれど,監査法人は「最後の砦」ではないよ。
日本版SOX法(J-SOX)の適用は始まったばかり(2009年3月期が適用初年度)で,理論先行なので実務的に定着していないということはあるから,監査法人の側にも「どういう具合に実務に落とし込んでいけばいいか手探り」という状況があることは容易に想像がつく。
けれど,いまだに「J-SOXではすべての電子メールの送受信記録を保存しておく義務がある」とか,「内部統制のためにシステムへのアクセス管理とアクセスログを全件管理する必要がある」とかいう売り込みをしてくる会社に比べれば,現場で企業と向き合っている公認会計士は,ずっと真摯に取り組んでいると思う。
コラムのいかにも感が出ているのは
監査法人が公認会計士の個人商店が寄り集まった「烏合の衆」になっていなければ良いのだが…と、心配してしまうのは著者の杞憂であろうか。
という一文。
監査法人はその成り立ちから,もともとは個人事業主の集合体だったかもしれない。だからといって,「烏合の衆」というのは言葉遣いの間違い?
烏合の衆 – 語源由来辞典:
烏合の衆は、中国『後漢書』の出典による。
烏合の衆の「烏合」とは、カラスの集団のことで、カラスが集まっても、鳴いてうるさいだけで統一性に欠けることから、喩えとしてこの語が生まれた。
「合成の誤謬」ならまだ分かる。
ともかく,いまどき個人事業主の集合ではどんどん厳格になる行政サイドの規制に対応できないので,実質的にも組織化は進んでいると思う(中小規模の監査法人については留保が必要かもしれないけれど)。
どういう議論の展開で「監査法人は最後の砦か」という問題提起に行き着いているかが確認できないのだけれど,監査法人(公認会計士)が企業にとっての「最後の砦」でないことは,公認会計士法のいっとう最初に書いてある。
(公認会計士の使命)
第1条
公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。

In Economy on 2008-12-03 by kensco Tagged: J-SOX, SOX, 内部統制
TechCrunch|用心のコスト:
官僚主義がイノベーションを妨げる。みんな知っていることだ。しかし、それはなぜだろうか。理由のひとつは、官僚主義が、用心深さから、即ち過去の失敗を繰り返してはならないという強い意志から生まれたたものだからだ。
「健全な懐疑心と不健全な猜疑心」ということばを思い出した。
記憶が曖昧だけれど,おそらく,監査論の講義で聴いたような。
「どうしてそうなんだろう」という疑問を呈することは,失敗を未然に防ぎ,そのことによって損害を最小限にとどめることができる限りにおいて健全な懐疑心といえる。良い芽までも摘みとってしまうときに,それは不健全な猜疑心になる,という意味で使われていたと思う。
ともあれ,
上のエントリーで紹介されているポール・グレアムの評論はこちらで原文が読める。
ポール・グレアムというひとについては,Wikipediaが詳しい。
その評論の中にSOX法について書いた部分がある。
The Other Half of “Artists Ship” by Paul Braham
In more recent times, Sarbanes-Oxley has practically destroyed the US IPO market. That wasn’t the intention of the legislators who wrote it. They just wanted to add a few more checks on public companies. But they forgot to consider the cost. They forgot that companies about to go public are usually rather stretched, and that the weight of a few extra checks that might be easy for General Electric to bear are enough to prevent younger companies from being public at all.
(拙訳)
もっと最近の例でいうと,サーベンス・オクスリー法はUSの新規公開市場を事実上破壊したことが挙げられる。
それはこの法律の立案者たちの意図したことではなく,ただ,公開企業にもう2,3のチェックを課したかっただけだったはずだ。しかし彼らはそれにかかるコストについて考慮することを忘れていた。公開間近の企業はたいがい,すでに業務的に目一杯の状況にあること,そしてGEのような企業であればどうということのない追加のチェック業務でも,若い小さな企業にとっては公開を阻害されることになるほど厄介なものであるということを忘れていた。
日本でもJ-SOX法が新規公開の障害になると言われている(いた)けれども,その適用初年度に金融危機,世界同時不況がぶつかって,それどころではない状況というのが実際のところかもしれない。
とはいえ,じきに今回の金融不安への反省と再発防止という名目で,新しい規制や規則が作られることになるだろうと思う。
そのときにはその規制や規則が,どういうコストを負わせることになるかを考えないといけない。
The problem is, people who propose new checks almost never consider that the check itself has a cost.
問題は,新しい規制を標榜するひとたちが,その規制自体がもたらすコストについて,ほとんど決して顧みることがないということだ。